インド・ヨーロッパ語族
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| 印欧語族 | |
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| 話される地域: | 15世紀頃は欧州、南アジア、中央アジア、西南アジア。現在はさらに広範に広がる |
| 言語系統: | 最も主流となっている語族 |
| 下位言語: |
アナトリア語派 (死語)
ヘレニック語派
トカラ語派 (死語)
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| ISO 639-2・639-5: | ine |
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印欧語派が多数派の国
印欧語族が公用語に取り入れられている国
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インド・ヨーロッパ語族(インド・ヨーロッパごぞく)は言語の分類の一つ。日本では、印欧語族や印欧諸語とも呼ばれる。ドイツ語圏ではインド・ゲルマン諸語(ドイツ語: Indogermanische Sprachen)と呼ばれるが、これは移民・植民を除く同語族の土着の公用地が、インド語派圏からゲルマン語派圏まで広がっていたと考えられていたためである。
大航海時代以降特に近代以後には、南北アメリカ大陸やアフリカ、オセアニアにも話者が移住、使用地域を大きく広げた。現在インド・ヨーロッパ語族の言語は100以上の国家で公用語となり、各言語の母語話者人口の合計は25億人を超える。
国際連合の6つの公用語のうち、英語、フランス語(ここまでの2言語が公式文書記録用語である)、スペイン語、ロシア語はインド・ヨーロッパ語族である(残りの公用語は中国語で、後からアラビア語が新規追加された)。
目次 |
語派
インド・ヨーロッパ語族に属する言語は、以下の語派に分けられる。
また通常の語派より大きい分類基準として、音韻的な特徴からケントゥム語派とサテム語派に大別される。
現存
+は死語を意味する比較言語学の記号。
ゲルマン語派
「ゲルマン語派」も参照
ケントゥム語群。ヨーロッパ中北部が原郷。ゲルマン民族の大移動を経てロマンス語にも大きな影響を与えた。
イタリック語派
「イタリック語派」も参照
ケントゥム語群。原住地はイタリア半島中北部であったが、ローマ帝国の拡大とともにその公用語として勢力を拡大した。そこで特にラテン語から生じた(現用)言語群を「ロマンス諸語」という。
- オスク・ウンブリア語群+ - ローマ帝国以前にイタリア半島中部に存在した。オスク語、ウンブリア語など
- ラテン・ファリスク語群+
ケルト語派
「ケルト語派」も参照
ケントゥム語群。イタリック語派と類似点が多い。ヨーロッパ中部に広く分布していたが、現在本当の母国語として話されるのはウェールズ語のみである。しかし前1000年代には中部ヨーロッパに広く分布する有力な言語であったことは、古代史家の伝えるところである。
- ガリア語+
- ゲール語族 - ケルト祖語の[kw]をそのまま保っている語族。このためQケルト語族とも呼ばれる。アイルランド語、マン島語+、スコットランドゲール語など
- ブリソン諸語 - [kw]が合体して[p]に変わった語族。このためPケルト語族とも呼ばれる。ブルトン語、ウェールズ語、コーンウォール語+
ギリシャ語
「ギリシャ語」も参照
ケントゥム語群。ヘレン語派とも呼ばれる。単独で1語派として扱われる。
アルメニア語
「アルメニア語」も参照
ケントゥム語群。イリュリア語派とも呼ばれる。単独で1語派として扱われる。
バルト語派
「バルト語派」も参照
サテム語群。スラヴ語派に近く関わりがあるとされ、スラブ・バルト語派としてまとめられる事が多い。ただしインド・イラン語派のように両語派の分化を示す証拠は残っておらず、言語学者の学説にとどまっている。現在ではリトアニア・ラトビアに分布しており、印欧祖語はこの付近が発祥と考えられている。
スラブ語派
「スラブ語派」も参照
サテム語群。東ヨーロッパに分布する。全体的に保守的で古い構造が残っている。
- 東スラヴ語群 - ロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語
- 南スラヴ語群 - 古代教会スラヴ語+、スロヴェニア語、セルボ・クロアチア語(セルビア語、クロアチア語、ボスニア語、モンテネグロ語)、ブルガリア語、マケドニア語など
- 西スラヴ語群 - ポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語、ポラーブ語+、カシューブ語、上ソルブ語、下ソルブ語など
インド・イラン語派
「インド・イラン語派」も参照
サテム語群。西アジア~南アジアにかけて分布。インド語派とイラン語派は発見されているもっとも古い言語同士で意思疎通が可能なほど似通っており、まとめて扱われる。印欧語族の分類は一般に12語派程度で表現されるが、その場合ダルド語派とカーフィル語派を数えていない。
- インド語派 - サンスクリット語+、プラークリット語、パーリ語、ヒンディー語、ウルドゥー語、ベンガル語、ネパール語など
- イラン語派 - アヴェスター語+、ペルシア語、パシュトー語、クルド語など
- ダルド語派 - パキスタン北西部に分布。
- カーフィル語派 - ヌーリスターン語派とも呼ばれる。ヒンドゥークシュ山脈山中に散在。ただし別の語派として扱う説もある。
アルバニア語
「アルバニア語」も参照
サテム語群。単独で1語派として扱われる。
死語
以下の二語群は全て死語だが、19世紀末までに印欧語族の比較言語学研究が完結しかけた後、20世紀初頭になって新たに発見され、その研究に新たな発見や疑問が追加された。たとえば両語群はケントゥム語群でありながら、東側に位置するという特徴を有している。
アナトリア語派
「アナトリア語派」も参照
ヒッタイト語派とも呼ばれる。古代西アジアで話されていた。インド・ヨーロッパ語族とは別の語族としたうえで、相互に関係があるとする説も。発音や文字などにおいて、印欧語族に新たな発見を多数もたらした。
- ヒッタイト語、ルウィ語など。
トカラ語派
「トカラ語派」も参照
トカー語、トハラ語とも呼ばれる。現在中国の新疆地域で8世紀まで話された。
- アグニ語(トカラA方言)
- クチャ語(トカラB方言)
不明
資料が少ないなどの理由で関係性が不明な死語。
印欧語族の歴史
文法と簡略化
分化が始まった時点での印欧祖語は、多様な語形変化を持つ言語だったと想定されている。しかし時代が下り、言語の分化が大きくなると、各言語は概して複雑な語形変化を単純化させていった。
- 数
- 印欧祖語には文法的な数には単数と複数の他、対になっているものを表す「双数」(両数、対数とも呼ばれる)があったと考えられているが、のちの時代にはほとんどの言語で消滅した。現在でも双数を使うのはスロベニア語、ソルブ語、スコットランド・ゲール語、ウェールズ語、ブルトン語などごくわずかに過ぎない。
- 性
- 印欧祖語にあったと考えられる男性、女性、中性という3つの文法的な性の区別は、現代でも多くの言語に残るが、一部では変化している。例えば、ロマンス語派の大半やヒンディー語では男性と女性のみになり、北ゲルマン語派の大半やオランダ語では男性と女性が合流した「通性」と中性の二つの性が残っている。英語、ペルシア語、アルメニア語ではほぼ消滅した。
- 格
- 印欧祖語は、名詞・形容詞等の文法的な格として主格、対格、属格、与格、具格、奪格、処格、呼格の8つを区別していたと考えられている。紀元前のインド・ヨーロッパ諸語にはこれらを残す言語がいくつかあったが、後世には特に名詞・形容詞については概ね、区別される格の種類を減らしている。スラヴ諸語ではチェコ語やポーランド語の7格、ロシア語の6格など豊富な格変化を残す言語があり、ルーマニア語は5格、ドイツ語、アイスランド語では4つの格が残っているが、ヒンディー語などは2つの格を持つのみである。その他の言語では名詞・形容詞の格変化を失った言語が多い。多くのロマンス諸語は名詞・形容詞の格の区別を失っている。英語の名詞は主格と所有格(属格が意味限定的に変化したもの)を残すのみである。名詞や形容詞の格を退化させた言語も代名詞に関しては格を区別するものが多いが、ペルシア語のように代名詞についても格変化をほぼ失った言語もある。
印欧祖語は、主語・目的語・動詞の語順が優勢なSOV型言語だったと考えられており、古い時代のインド・ヨーロッパ諸語、例えばヒッタイト語、インド・イラン語派の古典諸言語、ラテン語ではその特徴が見られる。但し、後にSOV型以外の語順の言語も現れ、SOV型は印欧語に典型的な語順とまでは言えなくなっている。現代では言語により語順は様々だが、ヨーロッパでは主語・動詞・目的語の語順が優勢なSVO型言語が比較的多く、ドイツ語のように本質的にはSOV型でも一見SVO型のように見えるSOV-V2語順の言語もある。一方、中東やインドでは現在でもSOV型言語が多い。
分布と起源
「語族」を参照
所属は遺伝的関係によって決定され、すべてのメンバーがインド・ヨーロッパ祖語を共通の祖先を持つと推定される。インドヨーロッパ語族の下の語群・語派・分枝への所属を考えるときも遺伝は基準となるが、この場合にはインドヨーロッパ語族の他の語群から分化し共通の祖先を持つと考えられる言語内での共用イノベーションが定義の要素となる。たとえば、ゲルマン語派がインドヨーロッパ語族の分枝といえるのは、その構造と音韻論が、語派全体に適用できるルールの下で記述しうるためである。
インド・ヨーロッパ語族に属する諸言語の起源はインド・ヨーロッパ祖語(印欧祖語)であると考えられている。印欧祖語の分化と使用地域の拡散が始まったのは6,000年前とも8,000年前とも言われている。その祖地は5,000–6,000年前の黒海・カスピ海北方(現在のウクライナ)とするクルガン仮説と、8000–9500年前のアナトリア(現在のトルコ)とするアナトリア仮説があるが、言語的資料が増えた紀元前後の時代には、既にヨーロッパからアジアまで広く分布していた。
この広大な分布に加えてその歴史をみると、前18世紀ごろから興隆した小アジアのヒッタイト帝国の残した楔形文字(くさびがたもじ)による粘土板文書、驚くほど正確な伝承を誇るインド語派の『リグ・ヴェーダ 』、そして戦後解読された前1,400‐前1,200年ごろのものと推定される線文字で綴られたギリシア語派のミュケナイ文書など、前1,000年をはるかに上回る資料から始まって、現在の英独仏露語などの、およそ3,500年ほどの長い伝統をこの語族はもっている。これほど地理的・歴史的に豊かな、しかも変化に富む資料をもつ語族はない。この恵まれた条件のもとに初めて19世紀に言語の系統を決める方法論が確立され、語族という概念が成立した。
インド・ヨーロッパ諸語は理論的に再建することのできる、一つのインド・ヨーロッパ共通基語もしくはインド・ヨーロッパ祖語とよばれるものから分化したと考えられている。現在では互いに別個の言語であるが、歴史的にみれば互いに親族の関係にあり、それらは一族をなすと考えることができる。
これは言語学的な仮定である。一つの言語が先史時代にいくつもの語派に分化していったのか、その実際の過程を文献的に実証することはできない。資料的にみる限り、インド・ヨーロッパ語の各語派は歴史の始まりから、すでに歴史上にみられる位置についてしまっていて、それ以前の歴史への記憶はほとんど失われている。したがって共通基語から歴史の始まりに至る過程は、言語史的に推定するしか方法はない。
またギリシア北部からブルガリアに属する古代のトラキアにも若干の資料があるが、固有名詞以外にはその言語の内容は明らかでない。またイタリア半島にも、かつてはラテン語に代表されるイタリック語派の言語以外に、アドリア海沿いで別の言語が話されていた。なかでも南部のメッサピア語碑文は、地名などの固有名詞とともにイタリック語派とは認められず、かつてはここにイリュリア語派の名でよばれる一語派が想定されていた。しかし現在ではこの語派の独立性は積極的には認められない。
系統樹と年代
ニュージーランド・オークランド大学のラッセル・グレーとクェンティン・アトキンスン (Russell D. Gray, Quentin D. Atkinson)[1]の言語年代学的研究によれば、インド・ヨーロッパ祖語は約8700 (7800–9800) 年前にヒッタイト語につながる言語と、その他の諸語派につながる言語に分かれたという結果が出て、アナトリア仮説が支持された。
この語族の87言語の基本単語2,449語について、相互間に共通語源を持つものがどれほどあるかを調べ、言語間の近縁関係を数値化し、言語の系統樹を作成した。この系統樹によれば、まずヒッタイトの言語が登場、その後、7,000年前までにギリシャ語を含むグループ、アルメニア語を含むグループが分かれ、5,000年前までに英語、ドイツ語、フランス語などにつながるグループができたという。
Gray & Atkinson 2003[1]による、系統樹と、祖語の年代を示す。年代の単位はBP(年前)。( ) 内はブートストラップ値(グループの確実さ)で、不確実な分岐も図示されていることに注意。また、死語のほとんど(トカラ語派とヒッタイト語以外)と一部の現存言語グループ(ダルド語派、カーフィル語派)が解析対象となっていない。そのため、語派の祖語の年代は図の年代よりさらに古くなりうる。
| インド・ヨーロッパ語族 8,700 |
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ヒッタイト語(おそらくはそれを含むアナトリア語派)が最初に分岐したことがわかる。また、サテム諸語(バルト・スラヴ語派、インド・イラン語派、アルバニア語、アルメニア語)は一まとまりの言語系統ではない。
関連項目
- 印欧語源辞典
- サテム語派
- ケントゥム語派
- グリムの法則
- アーリアン学説
- スキタイ
- コーカソイド
- エスペラント - 人造語であるため、正確には印欧語族ではないが、単語の大半と文法構造を印欧語族、特にラテン語やフランス語などロマンス語派から借用しており、この点は特筆される。他に印欧語族をベースにした人造語には、ヴォラピュックなどが存在する。
出典




