カエンタケ
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| カエンタケ Hypocrea cornu-damae Pat. | |||||||||||||||||||||
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| ファイル:Podostroma cornu-damae.jpg | |||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||
| Hypocrea cornu-damae Pat. |
カエンタケ(火炎茸・火焔茸、Hypocrea cornu-damae)は、ニクザキン目ニクザキン科ニクザキン属に属する子嚢菌の一種である。
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形態
子実体は真性の子座の形態をとり、単一もしくは基部から2~3本ないし十数本程度に分岐することがあり、地表近くで枝分かれして指状の分枝が株立ち状をなし、あるいは上方で分岐して厚みに富んだ鶏冠状を呈する。基部付近における径 10-15 mm程度、各分枝の径は 3-7 mm程度、子実体全体の高さは、ときには10 cmを超える。表面は肉眼的には平滑、ほぼ全体が鮮赤色(基部付近は淡橙色あるいは淡い黄色を帯びる場合があり、先端は時にやや白っぽい)。乾燥時には濃い臙脂色またははやや黒ずんだ赤紫色になる。肉はやや硬くてもろく、乾けばコルク質となり、内部組織は白色で空気に触れても変色しない。基部以外のほぼ全面に、ほとんど完全に埋もれた状態で子嚢殻を生じるが、不稔部分との境界は不明瞭である。
子嚢殻は広楕円形で、子実体の表面にはほとんど突出せず目立たない。子嚢は円筒形で先端はやや平ら(載頭状)となり、8個の子嚢胞子を一列に生じるが、成熟時には子嚢内部で分裂して16個の二次胞子(part spore:secondary spore)になる。側糸は認められない。二次胞子はほとんど無色あるいはかすかに淡黄褐色を呈し、一端が平らな広楕円形ないし卵形、平らな面以外の表面は比較的粗い疣に覆われる。子実体の組織外層は厚さ50 μm程度で、多角形で赤橙色を呈する細胞群で構成されている。子座の内部組織は、無色で壁が薄い菌糸で構成された絡み合い菌組織をなしている。
無性世代はグリオクラディウム・ウィレンス型(Gliocladium virens-type)で、フィアライドは先端が細まったアンプル状をなし、主幹菌糸から分岐した短い側枝状菌糸の先端部に密集して形成される。分生子は類球形・薄壁でほとんど平滑またはかすかに粗面、一端がやや平ら(載頭状)となり、淡緑色を呈する[1]。ただし、分生子の色調は、培養開始から長時間を経過すると次第に淡色となり、一年ほど培養したものではほぼ無色になるという。また、培養下での厚壁胞子の形成は認められない[2]。
生態
初夏から秋にかけ、広葉樹(ミズナラ・コナラ)の立ち枯れ木の根際や、なかば地中に埋もれた倒木などから発生する。立ち枯れ木の周囲に発生する場合、子実体の基部は、地中に走る樹木の枯れた太い根につながっている。分類学的位置から考えて、腐朽した木材を栄養源とするのではなく、木材の中に生息している他の菌の菌糸から栄養を得ている可能性がある(後述)。
分布
日本・中国・ジャワ島などに産する。中央アメリカ(コスタリカ)からもきわめて近い種(あるいは同一種か?)が報告されている。
日本国内では、カシノナガキクイムシによるブナ科の樹木の枯死例(いわゆる「ナラ枯れ」)が増えており、これに伴ってカエンタケの発生例も普遍的なものになりつつあるという指摘がある。ただし、カシノナガキクイムシが、カエンタケを直接的に伝播しているものではない。
毒性
文政年間(1818 - 1829年)の植物図鑑『本草図譜』に「大毒ありといへり」との記述があることから、古くから中毒・死亡事故が発生していたことがうかがわれている。致死量はわずか3g(子実体の生重量)程度ときわめて強力である。日本では6例ほどの中毒事例が報告され、計10名の中毒患者が出ており、そのうち2名は死亡している。
症状
摂取後10分前後の短時間で症状が現れる。初期には消化器系の症状が強く、腹痛・嘔吐・水様性下痢を呈する。その後、めまい・手足のしびれ・呼吸困難・言語障害・白血球と血小板の減少および造血機能障害・全身の皮膚のびらん・肝不全・腎不全・呼吸器不全といった多彩な症状が現れ、致死率も高い。また回復しても、小脳の萎縮・言語障害・運動障害、あるいは脱毛や皮膚の剥落などの後遺症が残ることがある[3]。
毒成分
マイコトキシンとして知られているトリコテセン類(ロリジンE、ベルカリンJ(ムコノマイシンB)、サトラトキシンHおよびそのエステル類の計6種類)[4]が検出されている。これらの成分には皮膚刺激性もあるため、手にとって観察するだけでも皮膚炎を起こす可能性がある[5]。味は苦く、口に含むとひどい口内炎になると言われている。
類似種
ツノタケ (Hypocrea alutacea Ces. et de Not.) は、子実体がクリーム色ないし淡黄褐色を呈する。また、エゾシロボウスタケ (Hypocrea gigantea (S. Imai) Chambr.) はより大形で、全体が灰白色を呈する。さらに、日本からはH. daisenense (Doi et Uchiyama)Chamb.やH. cordyceps (Penz. & Sacc.) Chambr.(ともに和名なし)などが知られている[6]。以上の4種は、いずれも地中に埋もれた腐朽材に生えるが、キヌガサヤドリタケ (H. solmsii Fischer) は、キヌガサタケの蕾から発生することで有名である。なお、これらの種が、カエンタケ同様の毒性を有しているのかどうかについては、現時点では不明である。
いくつかの中毒例では、外観がやや類似している食用キノコのベニナギナタタケ (Clavulinopsis miyabeana) や冬虫夏草などとと誤って摂取されている。ベニナギナタタケは、子実体が細い棒状で肉質がもろくて崩れやすく、ほとんど無味なのに対し、カエンタケは硬い肉質で、内部組織は白く苦味がある。冬虫夏草の類では、その子実体の基部が、種々の昆虫やクモ類の虫体、あるいは地下生の子嚢菌(ツチダンゴ属)の子実体などに連結するため、地中部まで丁寧に堀り上げれば誤認することは少ない。
分類学的位置について
上述した類似種とともに、従来はツノタケ属 (Podostroma) に置かれていたが、最近ではニクザキン属 (Hypocrea) に統合されている。ニクザキン属のキノコの多くは枯れ木上に発生するが、実は枯れ木の内部に存在する他のキノコの菌糸から栄養分を奪って生育する菌寄生菌であるという。また、明確に他の菌の子実体上に発生する種類としてキヌガサヤドリタケが知られており、カエンタケおよびその類似種も、実は木材腐朽菌ではなく、他の菌の菌糸から栄養を得ているのではないかと考えられている[7]。
参考文献
- 長沢栄史(監修)・安藤洋子ほか、2003.『日本の毒きのこ』.学習研究社. ISBN 4054018823
- 本郷次雄(監修)・幼菌の会(編)、2001.『カラー版 きのこ図鑑』.家の光協会. ISBN 4259539671
- 今関六也ほか(編)、1988.『日本のきのこ』.山と渓谷社, ISBN 4635090205
脚注
- ^ Doi, Y., 1973. Revision of the Hypocreales with cultural observations V. Podostroma giganteum Imai, P. cornu-damae (Pat.) Boedijn and Hypocrea pseudogelatinosa sp. nov. Reports of the Tottori Mycological Institute (Japan) 10: 421-427
- ^ Doi, Y., 1967. Revision of the Hypocreales with cultural observations Ⅲ. Three species of the genus Podostroma with Trichoderma or Trichoderma-like conidial states. Transactions of the Mycological Society of Japan 8:54-57.
- ^ カエンタケ中毒の1例 医学書院ライブラリー
- ^ [1]Saikawa Y.; Okamoto H.; Inui T.; Makabe M.; Okuno T.; Suda T.; Hashimoto K.; Nakata M. Toxic principles of a poisonous mushroom Podostroma cornu-damae. Tetrahedron 57(39):8277-8281.
- ^ 朝ズバ!読売などカエンタケ報道の補遺 - 大阪市立自然史博物館 佐久間大輔・主任学芸員
- ^ Doi, Y., & S. Uchiyama, 1987. A New Podostroma Species from Japan. Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany 13(4): 129-132
- ^ Chamberlain, H. L., Rossoman, A. Y., Stewart, E. L., Ulvinen, T., and G. J. Samuels, 2004. The stipitate species of Hypocrea (Hypocreales, Hypocreaceae) including Podostroma. Karstenia 44: 1-24
外部リンク
- 八王子のきのこ - カエンタケ
- カエンタケ(Podostroma cornu-damae)の毒成分の探索 (PDF) 天然有機化合物討論会講演要旨集(43) pp.443-448 20010901
- [2] (PDF) Agilent 6460 によるカエンタケ中大環状トリコテセン類の分析 アジレント資料ライブラリー LC-MS-201012TK




