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内閣総理大臣秘書官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

内閣総理大臣秘書官(ないかくそうりだいじんひしょかん)とは、国家公務員の役職の一。内閣総理大臣に常に付き従って、機密に関する事務を取り扱い、また総理大臣の臨時の命により政府各部局や与党等との調整に当たる役職である。法令上は、『内閣総理大臣に附属する秘書官』と呼称される。 俗に総理秘書官首相秘書官

目次

根拠法令

内閣法第20条により内閣官房に置かれ、内閣官房組織令(政令)第11条によりその定数は5人と定められている。ただし、内閣官房組織令の改正により、当分の間7人とするとされている(附則第9項、2011年9月現在)。 これらの秘書官は、国家公務員法第2条により特別職の国家公務員とされている。

秘書官の構成

秘書官の内訳は慣例的に政務担当1名、事務担当6名の計7名で構成される。

また、秘書業務を円滑に行うため、官邸には「総理大臣秘書官室」が設置されており、専従スタッフが秘書官の命を受けて秘書業務の実務を担当する。

政務担当首相秘書官(首席秘書官)

政務を担当する政務担当秘書官は、一般的に「首席秘書官」と呼ばれることもあるが、これは法的に定められているわけではなく、あくまで俗称である。内部的・非公式な序列はあるが、法的には事務担当秘書官も同列の扱いである。

通常は首相の国会議員秘書として長年仕えてきた人物が任命される。しかしながら、橋本龍太郎首相が当時通産官僚であった江田憲司を呼び寄せたように、ごく希に官僚から選ぶ場合もある。他にも、政策ブレーンや(国会議員としての後継を念頭に置いた形で)親類縁者から選ぶケースもある。1970年代中頃までは、いわゆる「番記者」として関係を深めた新聞記者を秘書官に任命する例も多かった。いずれのケースであっても、基本的に首相の信頼の厚い人物が選ばれるため、首相に対して影響力を持つことが多いと言われる。

主な業務は首相のスケジュールの最終的な調整を担当することであるが、それ以外にも首相の命を受けて政策形成の補佐や政府各部門の調整をしたり、首相とともに長い間永田町で仕事をしてきた実績や人脈を生かして首相と与党、時によっては野党との密かな連絡調整役となったりするなど、多岐に亘る。とは言え必ずしもこの限りではなく、首相がどのような観点で秘書官を選任したかによって業務内容は広くなる場合もあれば、限定される場合もある[1]。特に、近年はマスコミ対応も重要な仕事と見做されている。

報道において「首相周辺」という表現があるとき、これはもっぱら政務担当秘書官の意味であり、非公式な場面でのオフレコ発言をした場合に用いられる。

事務担当首相秘書官

事務担当秘書官は、外務省財務省警察庁経済産業省[2]の各省庁から1名ずつ内閣官房に出向する形で就任する。通例では、財務省出身者が事務秘書官の中で筆頭格とされ、他の事務秘書官よりも年次が上(最古参)の者が就く[3]

秘書官には、通常、本省課長級または局次長・審議官級で、将来の事務次官候補と目されるような人物が選ばれる。高級官僚の人事ローテーションの一環と言う面があり、長期政権となった場合は、概ね2~3年で交代する。ただし、首相が政変などで短期で交代すれば、秘書官もその任を解かれて元の省庁に戻されるのが通例である。例外的に、5年以上に亘った小泉政権においては、警察庁出身の秘書官[4]を除いて同じ人物が一貫して秘書官を務めた。

事務秘書官の業務は、それぞれが1府12省庁の処務を分担[5]して受け持ち、首相を補佐する。また各省庁と首相官邸の連絡役として、政策や、首相の公式な発言(国会答弁や外国首脳との会談での発言など)の内容などの調整を行う。しかし、そのような業務内容から、出身省庁からの監視役・スパイと批判的に表現されることもある。

2008年9月に発足した麻生内閣では、首相の意向により新たに総務省からの出向者を加え、政務秘書官を含めて6人体制をとった[6]。また、最も年次が上である総務省出身の秘書官を政策統括担当とし、事実上の筆頭事務秘書官に位置付けた[3]。 続く鳩山内閣では通例どおりの5人体制に戻された。その後継の菅内閣では、厚生労働省出身者を事務筆頭秘書官とする6人体制[7]とされ、後に防衛省出身者を追加して7人体制となった[8]。但し、当時の政令で定員が6名とされていたため、当該秘書官は、一般職相当の「内閣総理大臣秘書官事務取扱」とされた[9][10]。次の野田内閣は、菅内閣と同構成ながら財務省出身者を筆頭格とする7人体制とした。

首相秘書官補(首相秘書官付)

事務秘書官の業務を助けるため、「総理大臣秘書官付室」が官邸に置かれ、各秘書官の出身省庁から選抜された若手課長補佐クラス(30代)の「内閣総理大臣秘書官補」(内閣総理大臣秘書官付)が各秘書官を補佐する[11]。 通常、事務担当秘書官と同じ外務省財務省警察庁経済産業省から1名ずつが選ばれるが、麻生内閣では総務省、菅内閣では厚生労働省防衛省からそれぞれ出されている。


歴代首相の政務秘書官

戦後歴代首相の主な政務担当秘書官
首相秘書官前職・首相との関係退任後
幣原喜重郎岸倉松内閣調査局調査官 
降旗徳弥衆議院議員逓信相
吉田茂松野頼三日立製作所社員、海軍将校自民党衆議院議員、防衛庁長官
木村公平自由党前衆議院議員自民党衆議院議員
片山哲森元治郎同盟通信社記者社会党参議院議員
芦田均下河辺三史日立製作所社員日製産業社長
鳩山一郎山本正一民主党前衆議院議員鎌倉市
若宮小太郎朝日新聞記者ラジオ関東常務、神奈川県知事選に出馬するも落選
石橋湛山川上大典朝日新聞記者日本自転車振興会理事、関東自転車競技会会長
岸信介安倍晋太郎毎日新聞記者、岸の娘婿衆議院議員、外相、自民党幹事長
中村長芳安倍晋太郎とは山口中学同級生、実業家日本プロ野球・ロッテオリオンズ(千葉ロッテマリーンズの前身)オーナー太平洋クラブライオンズ~クラウンライターライオンズ、(埼玉西武ライオンズの前身)オーナー
池田勇人伊藤昌哉西日本新聞記者政治評論家
佐藤栄作大津正議員秘書大利根カントリー倶楽部社長
楠田實産経新聞記者国際交流基金日米センター初代所長
田中角栄榎本敏夫民自党職員、日本電建部長、議員秘書ロッキード事件に連座し逮捕・有罪
三木武夫中村慶一郎読売新聞記者政治評論家、参院選に出馬するも落選
福田赳夫福田康夫丸善石油課長、赳夫の長男自民党衆議院議員、内閣総理大臣
大平正芳木村貢宏池会事務局長木村は後に宮沢の秘書官も務める
森田一大蔵官僚、大平の娘婿自民党衆議院議員、運輸相
鈴木善幸材津昭吾議員秘書参院選に出馬するも落選
中曽根康弘上和田義彦議員秘書、“中曽根の金庫番” 
竹下登波多野誠議員秘書竹下亘政策秘書
宇野宗佑森真一郎議員秘書 
海部俊樹金石清禅日本航空部長、早稲田大学雄弁会時代の後輩新進党新人候補~任期満了直前に繰り上げ当選保守党参議院議員
宮沢喜一木村貢宏池会事務局長 
宮澤洋一大蔵官僚、喜一の甥自民党衆議院議員
細川護熙成田憲彦国立国会図書館課長駿河台大学学長
村山富市園田原三日本社会党職員衆院選に出馬するも落選
橋本龍太郎江田憲司通産官僚衆議院議員、みんなの党幹事長
小渕恵三古川俊隆議員秘書、早大時代の後輩 
森喜朗宮村栄一議員秘書、早大時代の後輩 
小泉純一郎飯島勲議員秘書 
安倍晋三井上義行国鉄総理府ノンキャリア職員安倍晋三の議員秘書を経て衆院選に出馬するも落選
福田康夫福田達夫三菱商事社員、議員秘書、康夫の長男 
麻生太郎村松一郎議員秘書 
鳩山由紀夫佐野忠克元通産官僚[12]、弁護士 
菅直人岡本健司民主党職員、内閣官房専門調査員 
野田佳彦河井淳一松下政経塾2期生(野田の後輩)、議員秘書 

関連項目

脚注

  1. ^ 例えば上述の江田秘書官は、橋本首相の支持を背景に政府各省庁の統合などに力を振るった。
  2. ^ 田中角栄内閣成立時に増員された。田中は首相就任直前まで通産大臣を務めていたこともあって、産業政策を重視する姿勢を示す意味があったとされる。また、当時の通産省に貸しを作るような意図があったという見方もある。(江田・龍崎 2002)
  3. ^ a b 参考 読売新聞 2008/12/04付 連載『混沌政局』
  4. ^ 小野次郎-衆院選出馬のために退官。
  5. ^ 財務省出身者は「内政全般」、外務省出身者は「外交全般」、警察庁出身者は「治安・防衛」、経産省出身者は「広報」を担当する。
  6. ^ 但し、内閣官房組織令が改正されるまでの間、警察庁出身の秘書官は正規の秘書官ではなく、一般職の「内閣総理大臣秘書官事務取扱」とした。 麻生・自民党総裁:首相秘書官内定 1増で6人体制(毎日jp)
  7. ^ http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100604-612891/news/20100608-OYT1T01135.htm
  8. ^ 首相秘書官に初の防衛省出身…安全保障分野強化 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) (2010/12/17閲覧)
  9. ^ 但し、特別職である防衛書記官に一般職である内閣事務官を併任される形での就任となった。 (出典: 官報 平成22年12月20日 本紙 第5461号)
  10. ^ 後に政令の再改正で、上述のように定員を7人とされ、正規の秘書官に就任。
  11. ^ http://www.mof.go.jp/about_mof/recruit/mof/message/fy2009/saiyouc09a/p46.htm
  12. ^ 細川内閣で首相秘書官(事務)を務めており、2度目の就任である。

参考文献

  • 江田憲司・龍崎孝 著『首相官邸』文春新書(文藝春秋社) 2002年 ISBN 4166602225

外部リンク