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子嚢菌門

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

子嚢菌門
Ascomycota
ファイル:Morille2.jpg
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryote
: 菌界 Fungi
: 子嚢菌門 Ascomycota
亜門/綱
チャワンタケ亜門 Pezizomycotina
ホシゴケ菌綱 Arthoniomycetes
クロイボタケ綱 Dothideomycetes
ユーロチウム菌綱 Eurotiomycetes
テングノメシガイ綱 Geoglossomycetes
ラボウルベニア菌綱 Laboulbeniomycetes
チャシブゴケ菌綱 Lecanoromycetes
ズキンタケ綱 Leotiomycetes
リキナ菌綱 Lichinomycetes
オルビリア菌綱 Orbiliomycetes
チャワンタケ綱 Pezizomycetes
フンタマカビ綱 Sordariomycetes
所属不明 "Unplaced orders"
ラーミア目 Lahmiales
メデオラリア目 Medeolariales
トリブリディア目 Triblidiales
サッカロミケス亜門 Saccharomycotina
サッカロミケス綱 Saccharomycetes
タフリナ菌亜門 Taphrinomycotina
アーケオリゾミケス綱 Archaeorhizomyces
ヒメカンムリタケ綱 Neolectomycetes
ニューモシスティス菌綱 Pneumocystidomycetes
シゾサッカロミケス綱 Schizosaccharomycetes
タフリナ菌綱 Taphrinomycetes

子嚢菌門(しのうきんもん)は、菌界に属する分類群の一つであり、担子菌門と並ぶ高等菌類である。減数分裂によって生じる胞子を袋(子嚢)の中に作るのを特徴とする。

目次

特徴

子嚢菌門界の中の分類群で、微小な子嚢(しのう)を形成しその中に減数分裂によって胞子を作るのを特徴とする。担子菌門 とともに真菌類中の大きな部分(70パーセント程度)を占める。例として、酵母出芽酵母分裂酵母)、カビアオカビコウジカビアカパンカビ)や、一部のキノコアミガサタケトリュフ)がある。

下等なものは酵母のような単細胞生物から、酵母に近い糸状菌、高度のものは複雑な構造の子実体を作るものまで、多種多様である。かなり大柄なキノコを作る例もあるが、大部分のものは、ごく小型の子実体を形成する、目立たないものである。それらは往々に微小菌類と言われる。

藻類との共生体を形成して地衣類となる菌類も大部分がここに含まれる。

有性生殖が見つかっていない、いわゆる不完全菌も大部分がここに含まれると考えられる。むしろ、不完全菌の姿の方がなじみのあるメンバーも多い。またうどんこ病菌やタフリナ(天狗巣病菌)をはじめ多数の植物病原菌を含む。ヒトの病気の原因になるものとして、白癬菌水虫)、膣炎や皮膚炎の原因となるカンジダ、アスペルギルス症を起こすコウジカビ属菌などがある。カリニ肺炎の病原体Pneumocystis carinii は従来カリニ原虫と呼ばれてきたが、現在では子嚢菌に近いことが明らかになっている。

生活環

子嚢菌は無性世代(不完全世代=アナモルフ)と有性世代(完全世代=テレオモルフ)を持つものが多い。

不完全世代は半数体で、生殖器官として造嚢器と造精器を形成し、これらが接合して二倍体の完全世代となり、子嚢を作る。ただし二倍体の菌糸はほとんどのものでは子実体にのみ限定される。子嚢菌は完全世代を基準として分類されている。

不完全世代でも無性胞子(分生子)を作って繁殖するものが多く(特に不完全菌類はこれだけで繁殖する)、また植物病原菌などで多種類の無性胞子を作って複雑な生活環を営むものもある。

遺伝学の研究には完全(有性)世代が必要である。古くから遺伝学に用いられてきたアカパンカビ Neurospora crassa は最初から完全世代が知られている。コウジカビAspergillus は不完全菌類であるが、完全世代の知られるEmericella nidulans(=Aspergillus nidulans)が遺伝学の研究に用いられる。

なお、担子菌では接合後に菌糸が発達して菌糸体を新たに形成し、これを二次菌糸と言うが、子嚢菌類では古生子嚢菌をのぞいては二次菌糸は子実体にのみ見られる。

不完全菌

無性生殖でのみ繁殖する菌を不完全菌という。それらは実際には有性生殖をも有しており、その形質によって正しい分類位置を持つと考えられるが、その多くが子嚢菌類に属すると考えられている。ただし子嚢菌類にも不完全世代を発達させない例もあるし、担子菌系の不完全菌も知られている。

子嚢

子嚢菌は大量の子嚢を作るが、それが集まって子嚢果とよばれる構造を形成することもある(大きいものはいわゆるキノコとなる)。子嚢果の形態は分類基準として重要である。各子嚢では一連の体細胞分裂に続く減数分裂の結果、4ないし8個(または8の倍数)の子嚢胞子が形成される。こうしてできる半数体は膜(真正子嚢菌Euascomycetesでは細胞膜に、半子嚢菌Hemiascomycetesでは核膜に由来する)に包まれる。

子実体

子嚢菌類の子実体は、大きくは4つに分けられる。

  • 閉子嚢殻(Cleistothecium):子嚢は袋状の壁に被われ、ほぼ球形で口は開かない。子嚢は球形で殻の内部に散在する。不整子嚢菌類が形成する。
  • 子嚢殻(Perithecium):子嚢は袋状の壁に被われるが、上面に小さな口が開く。子嚢は細長く、子嚢殻の底面に並んで子実層を作る。核菌類が形成する。
  • 子嚢盤(Apothecium):子実体は平面的か中央がくぼんだ皿形で、皿の面に細長い子嚢が並んだ子実層がある。盤菌類が形成する。
  • 偽子嚢殻(Pseudothecium):見かけは子嚢殻に似るが、形成過程が大きく異なる。上記の子実体は接合で生じた細胞に由来する菌糸で形成されるが、この型の子実体は、接合前の菌糸で作られる。小房子嚢菌類が形成する。

命名法

学名については、元来子嚢菌類と不完全菌類を別の基準に従い別群として分類したため、完全世代と不完全世代を別個に命名する規定があり、あとから同種とわかったため1つの種に2つの学名がある例も多い。たとえば〈イネばか苗病菌〉にはGibberella fujikuroi [交配群C](完全世代)、Fusarium fujikuroi(不完全世代)の2つの名がある(同じ完全世代名の Gibberella fujikuroi でもA~Hの他の異なった交配群では別の不完全世代名が付けられている)。アオカビ属(不完全菌類としての学名は Penicillium)は子嚢菌類の Talaromyces など複数の属に相当する。

また地衣類の学名はそれを構成する子嚢菌の学名としても用いる。

分類

子嚢菌類の分類は、なかなか定まったものがない。古くから、子実体の形態によって、大きく4つに分け、子実体を形成しない半子嚢菌類と特殊な形態のラブールベニア類を独立させるのが普通である。しかし、子実体の形態には中間的なもの、特殊なものが多々あり、それらの帰属について諸説があるので、どの菌がどの綱に含まれるか、あるいは綱以下の目の扱いなどが定まらない。また、半子嚢菌類の一部が古生子嚢菌類として独立させる体系が認められつつある。

以下に示すのはごく古い体系である。

子嚢菌門 Ascomycota

半子嚢菌綱 Hemiascomycetes:子実体を形成しない。
エンドミケス目:出芽酵母など
タフリナ目:植物寄生菌、サクラの天狗巣病菌など
不整子嚢菌綱 Plectomycetes:閉子のう殻内に球形の子のうが散在
ウドンコカビ目:うどん粉病菌など
ユーロチウム目:アオカビコウジカビの完全世代
核菌綱 Pyrenomycetes:子のう果は子のう殻、細長い子のうがならぶ。
タマカビ目:アカパンカビの完全世代・バッカクキン冬虫夏草など
ラブルベニア菌綱 Raboulbeniomycetes:昆虫等の外骨格に寄生、菌糸体は縮小して個体
盤菌綱 Discomycetes:子のう盤を形成
ビョウタケ目
ファキジウム目
チャシブゴケ目:地衣類
チャワンタケ目:チャワンタケ、アミガサタケなど
セイヨウショウロ目:セイヨウショウロなど
小房子嚢菌綱 Loculoascomycetes:2重膜の子のうを子のう子座などに形成