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政治小説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

政治小説(せいじしょうせつ)とは、政治やそれに関わる事物を主題とする小説[1]。もしくは、特定の政治思想を鼓吹することを目的として書かれる小説[1]

目次

日本の政治小説

日本では、1880年代に、自由民権論ナショナリズムを鼓舞するために書かれた小説の一群を指す。

こうした意味での最初の政治小説は1880年に書かれた戸田欽堂の『民権演義情海波瀾』である。江戸時代人情本の流れを汲み、明治政府と民衆を芸者を争う2人の男に見立て、対立から和解に向かう姿を描いており、当時期待された「官民調和」の色合いを強く残している。だが、明治十四年の政変を機に板垣退助自由党大隈重信立憲改進党を結成すると状況は大きく変化することになる。1882年に自由党が機関紙(自由新聞及び絵入自由新聞)を創刊、立憲改進党の参加者であった矢野龍渓は官を辞して自分がかつて副主筆を務めていた郵便報知新聞に復帰してその社主に就任、その影響によって事実上の立憲改進党機関紙の役目を果たすようになった。これらの新聞では自派の主張を分りやすく民衆に伝えるために政治小説が執筆・連載された(なお、こうした経緯からこれら機関紙の記者が兼業で執筆する例が多かった)。

代表的な作品としては、1881年アレクサンドル2世暗殺を描いた宮崎夢柳の『鬼啾啾』をはじめ、桜田百衛の『西洋血潮小暴風』、小室案外堂の『東洋民権百家伝』、矢野龍渓の『経国美談』、東海散士の『佳人之奇遇』、末広鉄腸の『雪中梅』などが挙げられる。特に『経国美談』・『佳人之奇遇』は当時の若者に強い支持を受け、『雪中梅』の写実主義的な筆致は後世の文学にも少なからず影響を与えた。だが、その一方で旧態依然の古風な漢文体の文章で類型的な人物描写であったために、文学そのものの革新を促す動きにはつながらず、自由民権運動が収束する1890年代には急速に衰退していった。ただし、これまで小説を卑しいものと捉えてきた知識人階層が政治・社会問題を題材として小説を書いたことが小説および文学への偏見を改善させ、近代文学が社会に受容される基盤を作ったとする見方もある[誰によって?]

脚注

  1. ^ a b 新村出編 『広辞苑 第五版』岩波書店、1998年11月11日、1468頁。

参考文献

関連項目