沿海域戦闘艦
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沿海域戦闘艦(えんかいいきせんとうかん LCS, Littoral combat ship)はアメリカ海軍が現在開発中の新型戦闘艦。試作艦のLCS-1は2008年、LCS-2は2010年に就役した。沿岸戦闘艦(えんがんせんとうかん)または沿岸海域戦闘艦(えんがんかいいきせんとうかん)と翻訳される場合もある。
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概要
アメリカ海軍が大量建造を計画している小型の水上戦闘艦。従来のフリゲートにおおむね相当するが、ネットワーク中心戦などの新しいコンセプトに基づき、高度なセンサーやデータ・リンクなど電子兵器、無人兵器などを搭載して、沿海域での戦闘の主役となる。
2009年1月現在、ノースロップ・グラマン社とジェネラル・ダイナミクス社がそれぞれ示した設計に基づきプロトタイプとしてフライト0が建造されて試験を受けており、その結果に応じて、量産型としてフライト1が建造されることになっている。
ただし、対テロ戦争などの戦費負担、事故による建造遅延、および、想定任務の増大に伴うコンセプトの変更などを受けて、計画の見直しも検討されている。
来歴
沿海域戦闘艦のコンセプトは、1998年、当時海軍戦争大学(NAVWARCOL)の校長であったアーサー・セブロウスキー提督が提唱したストリート・ファイター・コンセプトに由来する。これは、同提督が提唱し、アメリカ海軍の新たな指導原理として採用されたネットワーク中心戦 (NCW)の概念に基づき、アメリカ海軍が採るべき方針について洞察するなかで見出されたもので、従来のハイ-ロー-ミックスの概念に起源を有しつつも、これを根本から覆している、きわめてラディカルなコンセプトであった。すなわち、スプルーアンス級駆逐艦とオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートに見られるような従来のハイ-ロー-ミックス・コンセプトにおいては、高戦闘力・高コストのユニットが前線に配置され、低戦闘力・低コストのユニットは後方など脅威レベルの低い区域に配置される。
これに対し、ストリート・ファイター・コンセプトで建造される艦は、低コストではあるが、NCWを活用して強力な戦闘力の発揮を導き、かつ、その名のとおりに沿海域の前線で攻撃的に活用されるのである。
当時、アメリカ海軍は既に、新世代の水上戦闘艦のあるべき姿としてSC-21コンセプトを採択し、これに基づいて巡洋艦級のCG-21、駆逐艦級の DD-21の整備計画を策定中であったが、SC-21計画は2001年に突如中止され、ストリート・ファイター・コンセプトを導入しての再計画が行なわれた。これは、
- 多様化する任務に単一の設計で対処するには限界がある。CG-21とDD-21は同一の設計に基づくこととなっていたが、計画開始後に次々と追加される任務に対応するため、先行して計画されたDD-21は、既に巡洋艦級と評されるまでに肥大化しており、なおも装備不足が指摘されていて、その一方、肥大化によって沿海域での戦闘には不適となりつつあった。
- 2000年に発生した米艦コール襲撃事件で確認されたとおり、沿海域戦闘においては、安価な武器でも、高価格な艦に大きな損害を与えうる (Cheap Killの危険性)。従って、少数の高価格な艦に頼り、これを不用意に前線に展開することは極めて危険である。
という2点で、従来のSC-21計画には重大な問題が内包されていることが判明したことによるものである。
そして、見直された新計画のもとで、ミサイル巡洋艦『CG(X)』、ミサイル駆逐艦『DD(X)』との組み合わせのもと、ストリート・ファイター・コンセプトをより具体化したものとして計画されたのが、沿海域戦闘艦LCSである。
設計
ストリート・ファイター・コンセプトは、アメリカ海軍の次世代艦隊についての洞察から発生したものであるため、極めてラディカルなものであった。すなわち、あるべき艦として提示された設計は2種類、300トン型と1200トン型で、どちらも大型の母船または支援船の支援を必須としており、いずれもミサイル1発の被弾で行動不能になることを許容せざるを得ず、300トン型にいたっては対空火力はスティンガーミサイルのみで、対ミサイル防御はソフトキルおよび低RCS性に期待するのみであった。セブロウスキー提督のチームは、ストリート・ファイター・コンセプトをLCSとして具体化するに当たり、コンセプトの骨子を保つ一方で、より在来の戦闘艦に近いものとした。
沿海域戦闘艦は、その名称が端的に表しているとおり、沿海域をその主たる戦場として想定している。沿海域戦闘艦を従来のフリゲートから隔絶したものとしているのが、ネットワーク中心戦という概念を中核としていることにある。すなわち、大射程の兵器(TWSなど)の前方展開センサーとして運用することにより、自艦装備の火器よりもはるかに強力な火力を導き、さらに、多数を建造し、艦隊のネットワークの一部として組み込むことにより、Cheap Killによって艦が失われた際に艦隊の戦闘力に与える打撃を極小化することができるのである。
LCSコンセプトの特徴を列記すると、下記のようになる。
- ネットワーク能力の重視。
- NCWコンセプトを基幹とする沿海域戦闘艦にとって、ネットワーク能力は死活的に重要な能力である。従って、オープンアーキテクチャ化され、統合されたC4Iシステムとともに、大型艦と同等のデータ・リンク装置を備えている。
- センサー能力の重視。
- 沿海域戦闘艦は沿岸において、艦隊の前方展開センサーとしての役割が期待される。このため、航空、水上または水中で活動できる各種無人機を運用し、情報収集を実施する。また、小型艦ではあるが、2機のLAMPSヘリコプターを余裕を持って運用できる航空能力を有し、柔軟な任務に対応できる。
- モジュール化による多任務対応。
- 小型の艦で多様な任務に対応するため、武器システムやエレクトロニクスを標準モジュール化し、短期間で改装することで、複数の任務に使い分けることを可能にする。また装備品が標準モジュールの組み合わせを前提としているため、計画から就役までの期間を従来の艦船より短期に行うことが出来た。)
- 小型かつ先進的な艦型。
- 小型化は、低コスト化による量産を実現するために不可欠の要素であるとともに、沿岸域での作戦行動をより容易とする。また、小型の艦において、強力な航空運用能力や十分な残存性を確保するため、先進的な艦型を積極的に採用する。
- 高速かつ低探知性を備えた船体。
- 本級が主戦場とする沿岸域は、潜在的に敵の支配下にあることが想定されている。従って、攻撃的作戦時においては、奇襲性を確保するために、高速性とステルス性は必須となる。
しかし、実戦では低コストより個艦の実戦力と多用途性が必要とされるのが常である。特に、敵対海域において分散運用され、孤立して戦う本級においてはなおさらこれが顕著である。そして個艦性能の向上は必然的に船体の大型化と高コスト化を招く(かつて同様に艦艇の低コスト化を狙ったアーセナル・シップ構想が、やはり個艦性能の低さが問題となって中止に追い込まれた、そして期待したほどのコスト削減効果が得られなかった経緯もある)。また、対テロ戦争の深刻化によって既存の兵器の量産が優先される結果、新兵器開発予算そのものが削減傾向にあり、計画の今後は未知数である。
建造
海軍から提出された要求書に、18件の応募があった。そのうち6件についてコンセプトスタディ契約がなされ、その中から単胴船(ノースロップ・グラマン社)、SES(レイセオン社)、三胴船(ジェネラル・ダイナミクス社)の3案が選定され、予備設計が進められることになった。
その後、単胴船(モノハル)案と三胴船(トリマラン)案が選定されて、プロトタイプのフライト0がそれぞれLCS-1、LCS-2として各1隻建造され、それぞれ2008年11月、2010年1月に就役した。当初計画では、これらを比較・検討の上で最終選考を行い、競争に勝った側のフライト0がフライト1として採用されることとされていた。
しかし2010年11月、計画は変更され、両クラスを並行して整備することとされた。2011年6月現在の計画では、2015年までに両クラスを10隻ずつ、計20隻を整備する予定である。[1]
- フリーダム級(ノースロップ・グラマン社)
- フリーダム (LCS-1)
- フォートワース (LCS-3)
- ミルウォーキー (LCS-5)
- デトロイト (LCS-7)
- インディペンデンス級(ジェネラル・ダイナミクス社)
- インディペンデンス (LCS-2)
- コロナド (LCS-4)
- ジャクソン (LCS-6)
- モントゴメリー (LCS-8)
参考文献
- 藤木平八郎「米LCSに求められるもの」、『世界の艦船』第643集、海人社、2005年6月、75-79頁。
- ロッキード・マーチン LCSプログラム・チーム「米LCS 2案の技術的特徴 - ロッキード・マーチン社案」、『世界の艦船』第643集、海人社、2005年6月、82-87頁。
- 編集部「米LCS 2案の技術的特徴 - ジェネラル・ダイナミクス社案」、『世界の艦船』第643集、海人社、2005年6月、88-93頁。
- 大熊康之 『軍事システム エンジニアリング』 かや書房、2006年。ISBN 4-906124-63-1。
関連項目
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