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法人税

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

法人税(ほうじんぜい、英語:Corporation Tax)とは、法人の所得金額などを課税標準として課される税金国税で、直接税、広義の所得税の一種。

日本の法人税は主に法人税法(昭和40年法律第34号)に規定されているが、租税特別措置法や震災特例法などの特別法によって、修正を受ける。

なお、法人の所得にかかる税には、地方税分である法人事業税法人道府県民税や、地方法人特別税などがあり、これらの税の影響をうけ、法人には税率が課される。(法定実効税率)これらの詳細は、各ページを参照。

目次

根拠

法人税の課税根拠については、私法上の議論を踏まえて、次の二つの考え方に分かれる。

  1. 法人擬制説:法人は、単に法的に擬制された存在であって、所得は株主や出資者のものであり、法人税はこれらの者に対する所得税の前取りである。したがって、法人税は、個人所得税の源泉徴収と同一視でき、経済的二重課税は個人において排除すれば足りることから、税率も平均税率でよいこととなる。
  2. 法人実在説:法人は、個人から別個独立した権利能力を有する法的主体であるから、課税面においても法人自らが納税主体になりうる。したがって、法人には個人と同様に担税力に差異があることから、税率は累進税率を適用すべきである。さらに、法人所得税と個人所得税の間には経済的二重課税は生じず、その排除措置を講ずる必要はないこととなる。なお、この説は法人独立説と呼ばれることもある。

日本の法人税

日本の法人税は、当初は法人に対する所得税の一種として導入され、1899年所得税法改正により新設された第一種所得(法人所得税)に由来する。1940年に法人に対する所得税が分離する形(法人税法の制定)によって成立した。
かつての高度経済成長時代における基幹税の役割を果たしていたが、バブル経済のころに所得税収に抜かれ、次第にその地位を下げつつある。
しかし、1980年代からの大幅な所得税減税(約30%)や、定率減税、バブル崩壊後の景気低迷や、1990年代後半の金融危機以後の景気低迷による雇用者報酬の伸び悩みなどにより所得税収が大幅に減少(1991年:26.7兆円→2006年:14.1兆円)、2003年からの量的金融緩和政策によるリフレ政策や、輸出面での好調から2006年には1988年以来の税収項目1位となった。2007年の国税の税収に占める割合は、所得税に次ぎ第2位である。
2008年は世界的な景気後退の影響を受け、補正予算では、2位で、2009年度の予算では、消費税とほぼ同額とされている[1]

また、2002年度からは子会社などへの利益移転や損失隠し飛ばしを阻止するため、連結納税制度が導入され、グループ企業が連結での業績で法人税を納税できる制度ができた。企業グループによっては節税できるようになった。 また、IT投資促進税制(IT投資減税、2005年度まで)、研究開発促進税制(研究開発減税)が整備され、企業のIT投資、研究開発へのインセンティブとなっている。

納税義務者

  1. 内国法人は、その全世界所得について納税義務を負う。ただし、内国法人のうち、公益法人等人格のない社団等については、収益事業を営む場合又は退職年金業務等を営む場合にのみ納税義務を負う(法人税法4条1項)。
  2. 外国法人は、国内源泉所得があるとき又は退職年金業務等を行うときには、納税義務を負う。ただし、外国法人のうち、公益法人等または人格のない社団等については、国内源泉所得で収益事業から生じるものがある場合にのみ納税義務を負う(法人税法4条2項)。
  3. 公共法人には、上記1、2にかかわらず、納税義務がない(法人税法4条3項)。

課税の範囲

法人税が課税される対象は、次の3つに区分される。

  1. 各事業年度の所得に対する法人税
  2. 各連結事業年度の連結所得に対する法人税
  3. 退職年金等積立金に対する法人税

申告、納付

  • 確定申告
  • 中間申告
  • 期限後申告
  • 納付
  • 更正の請求

法人税率の推移

法人税
年度 税率
35.0%
1952年 42.0%
1955年 40.0%
1958年 38.0%
1965年 37.0%
1966年 35.0%
1970年 36.75%(所得税減税に伴う税源確保)
1974年 40.0%(所得税の大幅減税に伴う財源確保)
1981年 42.0%(財政再建のため)
1984年 43.3%(所得税減税に伴う財源確保)
1988年 42.0%(暫定税率の期限切れ)
1989年 40.0%(抜本改正経過税率、消費税導入)
1990年 37.5%(抜本改正本則税率、消費税導入)
1998年 34.5%
1999年以降 30.0%
2003年 資本金1億円以上の法人に対する法人事業税において外形標準課税を導入(赤字でも徴税する為)
    • 上記税率は国税法人税のみ。法人地方税・法人事業税を含めた法定実効税率は現在多くの企業においておよそ40%
  • うち期末資本金が1億円を超えない普通法人および相互会社について[2]
  • 期末資本金が1億円以下の普通法人(いわゆる中小企業)および人格の無い社団
  • 所得金額のうち年800万円以下の金額  22%
(平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する事業年度では18%)
  • 所得金額のうち年800万円を超える金額 30%
  • 公益法人等、協同組合等、特定の医療法人 22%
  • 組合員数50万人以上・店舗売上高1,000億円以上の特定協同組合等(大規模生協)
  • 所得金額のうち年10億円以下の金額  22%
  • 所得金額のうち年10億円を超える金額 26%

企業規模による税制の調整

担税力の問題や社会に対する影響力等を考慮して、法人規模に応じた調整を法人税、およびその周辺法によって調整している。

例えば、中小企業に対しては、税率の軽課や損金算入枠の拡大、課税の繰り延べや税額控除等といった優遇的調整が租税特別措置法に於いてされている[3]

また、法人地方税(法人道府県民税・法人事業税の外形標準課税)は法人実在説的な立場から法人規模に応じた課税を行っているので、大企業に対しては重課となっていると言える。

繰越欠損金

赤字(欠損金)を出した企業の場合、その赤字を7年にわたって繰り越すことができ、利益と相殺できる。

欠損金の繰越制度は多くの国で採用されており、ドイツやイギリスに至ってはこの繰越期間が無制限である[4]

税収の推移

財務省の統計を参照(法人減税と不景気で、過去最高を記録した1988年に比べ2002年は10兆円の減収となっている。)

法人税
年度 税収
1984年 12兆円
1985年 13.1兆円
1986年 15.8兆円
1987年 18兆円
1988年 約19兆円(税率42%)(過去最高)
1989年 約18兆4,000億円(税率40%)
1997年 13兆4,754億2,600万円(税率37.5%)
1998年 11兆4,231億9,400万円(税率34.5%)
1999年 10兆7,959億8,500万円(税率30.0%)
2000年 11兆7,471億9,400万円
2001年 10兆2,577億9,100万円
2002年 9兆5,234億3,800万円
2003年 10兆1,151億9,400万円
2004年 11兆4,436億9,100万円
2005年 13兆2,735億6,700万円
2006年 14兆9,178億7,700万円
2007年 14兆7,443億9,800万円

日本の法人税率に関する議論

経団連は2007年、日本の法人税率の高さが海外移転につながっていると主張し[5]、米国と同等であるが(EU統合を契機に法人税引き下げ競争の起こった)欧州と比べると高い日本の法人税率引き下げを求めている(これに対して、日本共産党は反対している[6]) 。

しかし、日本の法人税は大企業を中心として優遇税制を敷いており、ソニーの12.9%を筆頭に、実際の負担率が極めて低い状況である[7]

税経新人会全国協議会は、表面税率だけでは比較できないこと、実際の税負担を有価証券報告書から計算すると、日本の大企業の場合、経常利益上位100社平均で30.7%であること[8]などを指摘し、批判している。なお、同調査によれば、トヨタ自動車は32.1%、NTTドコモは14.6%、三菱商事が8.1%、JTが14.6%、三井物産が9.3%である[9]。また、関東学院大学の湖東京至教授によれば、日本の消費税は仕入税額控除方式であるため、海外での売り上げについてはゼロ税率であり、輸出企業上位10社に限っても約1兆円の輸出戻し税があるとされる[10]。なおこの「仕入税額控除方式による輸出戻し税」はヨーロッパなどの付加価値税なども同様の機構をもっている[11]

また、経済産業省の「海外事業活動基本調査結果概要確報」によると、海外投資決定のポイントとして65.1%の企業が「現地での需要」をあげ、「税制」と回答したのは8.3%であるなど、日本の法人税率の高さが海外移転の主な理由ではないことも一部調査で明らかとなっている[12]

なお、国際的な法人税率引き下げ競争は問題点も指摘されており、WTOなど国際社会における枠組みについて議論されている。

ちなみに、アマゾンジャパン株式会社は、日本の法人税を支払っていない。アマゾンジャパンは商品の売主は日本法人ではなく、米国ワシントン州法人であるAmazon.com Int'l Sales, Inc.であり、同社は日本国内に支店等を有しないことをもって国税庁に抗弁してきた。2009年、東京国税局はアマゾンの流通センター内に米国法人の機能の一部が置かれており、これが法人税法および日米租税条約に規定する恒久的施設であるとして、2003年から2005年について[13]140億円の追徴課税を行った[14]。これに対してAmazon.com側は1億2000万ドルを銀行に供託[13]。その後日米当局間で協議が行われ、日本の国税庁の請求は退けられることで2010年9月に最終合意に至った。国税庁は銀行供託金の大部分を解放した[13]。しかし、Amazonの法人税については、依然としてフランス、ドイツ、日本(2006年から2009年)、ルクセンブルク、イギリスなどによって査察が進行中、または行われる可能性が指摘されている[13]

世界の法人税

2011年1月現在における法人所得課税の実効税率はアメリカカリフォルニア州で日本よりも高い40.75%でフランスが33.33%、以下ドイツが29.38%、イギリスが28.00%などとなっている[15]

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脚注

関連項目

外部リンク