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蒲鉾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

蒲鉾(かまぼこ)は、主として白身すり身を主原料とし、塩分を加えて加熱することにより、木の板(臭みのないモミシラベなどの木が好まれる)の上にゲル化させて製造した魚肉練り製品カニカマ(かに風味かまぼこ)など、形状や食感などを類似させ練り上げた蒲鉾のことを「風味かまぼこ」と呼ぶ。

ファイル:Kamaboko.jpg
紅白の板蒲鉾

目次

歴史

古くは材料を竹の棒に筒状に巻いて作った。その形が(がま)の穂に似ていることから、「蒲鉾」と呼ばれるようになったとされる。この最初期の蒲鉾は現在のような海水魚ではなく、主に淡水魚ナマズを原料としていた。竹を抜き去ると現在の竹輪の形になる。後に板の上に成形した「板蒲鉾」が登場し、区別のために「竹輪蒲鉾」と呼び分けていたが、元祖の方は「蒲鉾」が脱落して単に「ちくわ」となり、板蒲鉾の方は逆に板が外れて「蒲鉾」になった[1]。平安時代の『類聚雑要抄』には藤原忠実が永久3年(1115年)に転居祝いに宴会を開いた時の串を刺したかまぼこが載っている。これを確認できる最古の文献上のかまぼこであるとして、業界団体がその数字をとって11月15日を蒲鉾の日としている。

白身の魚は高価であり、蒲鉾もご馳走と考えられた。時に贈答品として用いられ、おせち料理にも利用される。豊臣秀頼の大好物であったと伝えられ、本能寺での信長の最後の晩餐にも供された。なお、かまぼこが商品として販売されるようになったのは江戸時代以降とされる。

武家の結婚式では鯛が縁起物として欠かせなかったが、経済的に用意できない場合は絵や模造品を持ってこれに代えた。その一つが細工蒲鉾である。今でも富山県の結婚式では巨大な鯛の蒲鉾細工が飾られ、式が終わると切り分けて参列者に配られる。

製法

原料はイサキイトヨリダイエソ、オオギス、サメ類、スケトウダラ(スケソウダラ)イシモチ(グチ)ニベハモムツなどである。

板付き蒲鉾では白身魚の白身の部分のみを使用し、赤身や血合い肉は用いない。捌いた魚の身を水で晒し、身の血液や脂肪を取り除く。この身を石臼などですり潰し、砂糖、塩、みりん、卵白を加えて練り合わせる(本来、塩を加えて練ることで自然に粘り気が生じるのだが、後の整形をしやすくするために増粘安定剤などの食品添加物を加えることもある)。

板付き蒲鉾は、練り合わせた身を「手付包丁(附庖丁)」というへら状の道具を用いて、「かまぼこ板」に半円状に盛りつける。近年、量販店などで市販されているものは、ベルトコンベア上で機械的に盛りつけられることも多い。その後、蒸す又は焼くことによって熱を通す。加熱方法の違いにより、以下のように呼び分けられる。

  • 蒸しかまぼこ - すり身を蒸して加熱したもの。
  • 焼抜かまぼこ - 蒸さずに板の下からあぶり焼きにして加熱したもの。「焼通しかまぼこ」という名称で呼ばれる地域もある。

板に盛りつけず、そのまま成形し、蒸し・焼きの他に茹で・揚げ等で加熱されるものがある。茹でたものがはんぺんつみれに、揚げたものが揚げかまぼこ九州では、つけあげと呼び、東日本では薩摩揚げ、西日本では天ぷらとも呼ばれる)などとなる。これら練り製品も広義の蒲鉾の一つであり、沖縄などでは単にかまぼこと言えば揚げかまぼこを指す場合が多い。

かまぼこの歯応えは「足(あし)」と呼ばれ、かまぼこの商品価値を左右する。この「足」は、魚肉の筋原繊維を構成するミオシンのS-S結合(ジスルフィド結合)が、関与している。

形態

板(蒲鉾板、あるいは空板(からいた)と呼ばれる)の上に半円形にすり身を盛り付けて作った「板蒲鉾」が一般的であるが、地方によって特色がある。

細工蒲鉾
ファイル:Umekama1.jpg
細工蒲鉾(鯛蒲鉾)
水引などの形に蒲鉾を整形したもの。結婚式の引出物など冠婚葬祭の引出物として作られている。本格的なものは、鯛型で実物大程度の大きさがある。また、松竹梅の形にし、縁起物としても作られている。島根の大社地方を中心に古くから作り伝えられてきた細工蒲鉾は、婚礼(披露宴)の引出物として有名である。他に富山県京都府舞鶴市のものが知られる。
巻かまぼこ(はべん)
富山県で一般的な板無しかまぼこ。板状にしたすり身をだし巻き卵のように巻いて作った物。断面に鳴門巻きのような模様ができるのが特徴。もともと昆布を巻き込んだ「昆布巻き(こぶまき)」を作るための製法で、昆布の代わりに焼き締めた蒲鉾で巻く「赤巻」などもある。同県では定番の食材で、同県でうどん等を食べるとラーメンの鳴門のように入っている蒲鉾を見ることができる。対して全国で一般的な板蒲鉾はほとんど作られないし、売られていない。県外に出るまでかまぼこ板なるものを見たことが無い人が珍しくない。
笹かまぼこ
その形状から、元は「かまぼこ」「のひらかまぼこ」「平かまぼこ」「ベロかまぼこ」などと呼ばれていた。仙台市一番町1935年昭和10年)創業した阿部蒲鉾において、旧仙台藩伊達家家紋「竹に雀」のに因んで「笹かまぼこ」と呼ぶようになってから、旧仙台藩地域で次第に名称が統一されていったという。現在では「笹かま」との省略形でも通用する。
支店経済都市である仙台市の仙台駅で土産品としての地位を確立したため、全国的には「仙台の特産品」との認識もあるが、名称の由来からも「旧仙台の特産品」であり(→仙台参照)、特定第3種漁港(全国的重要漁港)を擁する気仙沼市石巻市塩竈市のほか、宮城県内の太平洋沿岸の港町でも生産は多い。なお、阿部蒲鉾との違いを出すため、現在も「手のひらかまぼこ」の商品名を用いる企業もある。
現在の製法は、笹形の木枠あるいは製枠にすり身を入れておおよそを成型し、贈答品などではその後手で細かな成形をする工程を入れて、竹串に刺して焼いて作られる。
焼きかまぼこ
関西地方に多いかまぼこ。厚みを低く抑えた蒸しかまぼこの表面に、焼き目を付けたもの。焼き板かまぼことも言う。上記の焼き抜きかまぼこには該当しない。
削りかまぼこ
愛媛県八幡浜市周辺など南予地方で食べられている。戦前、日持ちの悪かった蒲鉾を乾燥させ日持ちさせたものを削り食したことから由来。

食べ方

加熱済の食品なので、薄切りにしてそのまま食べるのが一般的である。場合によっては少量のわさび醤油をつけて食べることもあり、これを「板わさ」と呼ぶ。板わさは居酒屋の他に蕎麦屋でも提供される。また、切り分けるだけで調理の手間がかからないため、朝食に用いられることも多い。軽く火を通して焦げ目を付けたものは生とは違った味わいがあり、酒のにするのも良く、また、茶碗蒸しに彩として入れることもある。その他、煮物や炒め物などあらゆる種類の料理に応用される。

産業

蒲鉾の生産量が日本で最も多いのは宮城県であり、全国シェアの10パーセントを占める(宮城県食産業振興課発表)。焼きちくわ、揚げ蒲鉾の分野でも全国最大の生産量を誇る。また、蒲鉾の消費量が最も多いのも宮城県である。この背景として、文化的には宮城県の名産品「笹かまぼこ」の存在が影響している。産業的には、宮城県は全国有数の漁業県であり、気仙沼漁港石巻漁港、塩釜漁港のような大規模な特定第3種漁港の存在と、関連する水産加工業の発達が影響している。

なお、蒲鉾の生産高トップの会社は、東京都に所在する紀文食品である。

主な蒲鉾産地

言語

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  • 俗にいう「かまとと」(かまとと振り)とは「かまぼこのことを『これは魚(とと)か』と聞く」ということから、無知・世間知らずを装ってかわいらしく見せる人(特に女性)を指す。江戸時代遊女が世間知らずを装うため、蒲鉾を指してこれが魚なのかと問うたことに由来するといわれる。
  • 「かまぼこ」とは大相撲隠語で、稽古をさぼることを意味する。土俵に上がらずに稽古場の板塀に背中をくっつけたまま稽古をしない様子が、蒲鉾を連想して「板についている」とのシャレ言葉に由来している。
  • 線路が周囲より高い場所または低い場所に設けられた踏切は、極端に盛り上がったり窪んだ形状になるため、「かまぼこ型踏切」といわれる。また、線路と周囲の高さがほぼ同一でも、カーブの途中に設けられた踏切は線路のカントを乗り越える必要があることから、同様に「かまぼこ型踏切」といわれる。
  • 軍隊駐屯地等に設置されたアーチ状の兵舎のことを、その形状から「かまぼこ兵舎」と呼ぶ場合がある。
  • オーディオにおいて、低音域と高音域が小さく、中音域が強調された音づくりをさして「カマボコ型」という。いわゆるドンシャリの反対である。
  • 警察機動隊常駐警備車のこと。初期の車は板蒲鉾状だったことから。
  • ボウリングでレーンオイルの乗り方が、レーン中央が厚め(滑りやすい)で左右が薄め(滑りにくい)の状態のことを「カマボコ型」と呼ぶ。
  • 将棋振り飛車戦法に対する居飛車側の囲いの一種であるミレニアム囲いも「かまぼこ」と称されることがある。
  • かつて西日本車体工業が製造していたバス車両「42MC」はその形状からバスファンを中心に「カマボコ(型)」という愛称で呼ばれている。

関連項目

脚注

  1. ^ DON! 全国かまぼこ連合会 日本テレビ 2010年9月28日放映。

外部リンク