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遠山一行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

遠山 一行(とおやま かずゆき、1922年7月4日 - )は東京府出身の音楽評論家実業家

目次

来歴・人物

日興證券会長遠山元一の長男として東京市麻布区笄町(現在の東京都港区西麻布)に生まれ育つ。クリスチャンの家庭であり、一行自身もプロテスタントの信仰で育った。

1929年成城学園小学校に入学。同級に加藤一郎がいた。1933年、いわゆる成城事件(成城騒動)により自主退学し、第2学期から麻布区立南山小学校に転校。1935年府立高等学校尋常科に入学。第1学年2学期からピアノを朴啓成(後の属啓成)に師事。1939年、府立高等学校文科乙類に進学。酒井悌(やすし)にチェロ和声学を学ぶ。1940年から成城学園の合唱団に加わり、ヨーゼフ・ローゼンシュトックの指揮のもとにハイドンオラトリオ『四季』、モーツァルトレクイエム』、バッハマタイ受難曲』などを演奏。1942年東京帝国大学文学部美学美術史学科に進み、属啓成のもとで一時中断していたピアノのレッスンを再開。1943年12月、第1回学徒出陣により東部第6部隊に編入され、戦時中は1945年7月から甲府の連隊で暗号教育の教官を務めるなど、1945年9月に復員するまで内地で軍隊生活を送る(この間、1944年9月、入隊中に帝大美学科を卒業)。

1946年4月、東京大学大学院に進み、音楽美学を専攻。同年、『音楽する心』が『音楽之友』誌の7・8月合併号に掲載されたところ野村光一に注目され、野村の勧めで10月から毎日新聞に音楽時評を執筆。1948年4月、慶應義塾高等学校講師となり、西洋音楽史を担当(1949年3月まで)。当時の受持ちのクラスに林光がいた。同年9月、齋藤秀雄たちの発議により子供のための音楽教室が開かれたことに伴い、同教室で音楽理論と音楽史を講じる(1951年夏まで)。同年、遠山偕成会長に就任。1949年から1950年まで日興證券監査役を務める。この間、1949年4月にフェリス女学院短期大学音楽部助教授となる(1957年3月まで)。同年5月から東京藝術大学音楽学部講師を兼任。

1951年に渡仏し、聴講生としてパリ音楽院パリ大学に入学。前者ではジャック・シャイエのもとで、後者ではノルベール・デュフルクのもとで音楽史を学ぶ。1957年に帰国。1959年から桐朋学園短期大学教授(~1974年)。この間、1960年12月まで讀賣新聞で音楽時評を担当。

1962年、遠山音楽財団を設立し理事長に就任、同時に付属図書館を東京都港区に開設、1987年に「日本近代音楽館」に改称。近現代日本の作曲家の自筆譜面10万点をはじめ、書簡、原稿、プログラム、録音資料など、資料は全50万点を所蔵していた。2010年3月自身の高齢と財政事情により閉館され、資料は明治学院大学に寄贈された。

1962年、妻子と共に再渡仏。翌年5月に、母が脳腫瘍で歩行困難となったため帰国。1966年江藤淳高階秀爾古山高麗雄たちと『季刊芸術』を創刊。1976年『ショパン』で第18回毎日芸術賞受賞。1979年、フランス文芸勲章オフィシエ章を受ける。

1983年、民間人として初めて東京文化会館館長となる。1985年紫綬褒章および中島健蔵音楽賞を受ける。1987年、京都音楽賞受賞。1991年東京芸術劇場館長を兼務。日本音楽コンクール委員長などを歴任。1993年勲三等旭日中綬章受章。1995年から1996年まで桐朋学園大学の学長を務める。1998年文化功労者に選ばれる。2010年に明治学院大より名誉博士号を授与された。

その他の著書に『私の音楽手帳』『いまの音むかしの音』(講談社)や『遠山一行著作集』全6巻(新潮社)などがある。

季刊芸術出版株式会社社長、東京音楽ペンクラブ会長、日本近代音楽財団理事長。遠山偕成の代表取締役相談役。

妻ともども愛猫家であり、自宅の庭に住みついた野良猫たちに「トンデレラ」「シンデレラ」(1977年当時流行していたキンチョールのテレビCMに因む)などの名を付けて可愛がっていたことがある[1]ジャズ愛好家でもあり、ジョン・コルトレーンマイルス・デイヴィスのファン。特にマイルスについては「アメリカ人のクラシック奏者で、これだけの音楽家を私は知らない」と発言している[2]

家族

妻の遠山慶子はピアニスト。弟の遠山信二は指揮者。末弟の遠山直道ダヴィッド社社長。長男の遠山公一は西洋美術史家で、慶應義塾大学文学部教授。

著書

  • 名曲のたのしみ 新潮社 1967
  • 音楽=ヨーロッパ=東京 音楽之友社 1968
  • 現代と音楽 講談社 1972
  • 音楽有愁 音楽之友社 1976
  • ショパン… 新潮社 1976 「ショパン」 (講談社学術文庫)
  • 音楽とともに 小沢書店 1981.9
  • 古典と幻想 音楽におけるマニエリスム 青土社 1983.7
  • ヨーロッパ近代クラシック音楽史 ロマン派のはじまりとその終焉 東京音楽社 1984.10
  • 遠山一行著作集 全6巻 新潮社 1986-87
  • ショパン カラー版作曲家の生涯 1988.7 (新潮文庫)
  • 考える耳考える目 青土社 1990.1
  • 河上徹太郎私論 新潮社 1992.9
  • 日付のある批評 1992~94・東京日記 音楽之友社 1995.6
  • 「辺境」の音 ストラヴィンスキー武満徹 音楽之友社 1996.2 (音楽選書)
  • 私の音楽手帖 講談社 1996.7
  • 猫好きの話 西麻布雑記 小沢書店 1996.7
  • マチスについての手紙 新潮社 1999.7
  • いまの音むかしの音 講談社 2000.10
  • 芸術随想 彌生書房 2003.6
  • モーツァルトをめぐる十二章 春秋社 2006.5

共編著

  • ワーグナー変猊 内垣啓一共編 白水社 1967
  • 芸術と思想 シンポジウム 江藤淳,高階秀爾共編 講談社 1969
  • 世界の名画 17 ピカソ 中山公男,高階秀爾共著 中央公論社 1973
  • 世界美術全集 34 ミロ・カンディンスキー 木村重信共著 小学館 1977.12
  • ラルース世界音楽作品事典 海老沢敏共編 福武書店 1989.11
  • ラルース世界音楽事典 海老沢敏共編 福武書店 1989.11
  • ピアノによせて 音楽之友社 1989.6 (音楽の森 名随筆選)
  • ラルース世界音楽人名事典 海老沢敏共編 福武書店 1989.11
  • 日本の名随筆 別巻13 名曲 作品社 1992.3

翻訳

  • 現代音楽への道 バッハよりシェーンベルクまで R.レイボウィッツ 平島正郎共訳 ダヴィッド社 1956
  • ストラヴィンスキー /ロベール・ショアン 白水社 1969 (永遠の音楽家)
  • アンセルメとの対話 クロード・ピゲ 寺田由美子共訳 みすず書房 1970
  • クープラン ピエール・シトロン 白水社 1970 (永遠の音楽家
  • フランス音楽史 ノルベール・デュフルク 平島正郎,戸口幸策共訳 白水社 1972
  • 現代の絵画 12 ドイツ表現主義 エーヴァルト・ラトケ 平凡社 1974
  • アルフレッド・コルトー /ベルナール・ガヴォティ 徳田陽彦共訳 白水社 1982.2

脚注

  1. ^ 遠山一行『猫好きの話』p.44(小沢書店1996年
  2. ^ 遠山一行『猫好きの話』p.171(小沢書店1996年